日本の政治や、経済の中での考え方が現在大きく変わろうとして来ている。これは小泉首相という、戦後には類まれな「国民に負担を強いることを知らせることが、自分の職務」と考えている人の存在が大きい。そして、過去のいくつかの既得権にも大きく改革の手が入ろうとしている。中味を良く見ると、過去のロジックが破綻していることが目に付く。例えばであるが、石油公団のあり方に対しては、批判は数多くあったものの現実的な施策にというところまでは来ていなかった。また道路特別会計を廃止するということなどは、大英断といっていいだろう。自民党の中からそのような動きが出てきたことが、時代の変革への動きということにつながることを示している。
なぜ、これほどまでに過激な形にならないと変化というのは起こらないのであろうか。これは、介在する人々の意識の保守性と、周囲に群がる利権のからくりによるものが大きいと私は考える。意識の保守性は当事者として「現在の職を捨てられるか」ということであるし、周囲の利権としては「これだけ確保したものを、みすみす失いたくない」という、いずれもが利を中心として考える仕組みで動いていることがわかる。平成9年当時の通産大臣だった、堀内光雄氏は石油公団のロジックのでたらめさと、内部腐敗を雑誌文芸春秋に投稿した。(平成10年5月号だと記憶する)その中で、公団の持つロジックを見て私は、本当に驚いた。石油公団は「採掘に失敗したら、補助金は返還させない」のである。これは、目的論からすれば「石油が出ないことを求めている公団」と同義語である。これがいかにして公団になったのか、日本の政治と経済の怠慢さが見事に現れている。
しかし、時がたち遂に見直しの対象となってきた現在、今までの状況と変わることでいくつかの面白い現象が出てくると思う。ひとつは、自民党以外の保守化である。これは、民主党が一番影響が大きいだろう。理由は「過去を失うかもしれない」からである。民主党のメンバーは、今まで自民党が「改革をしてこなかった」から、改革と言うことが出来た。しかし、本当に改革がはじまると、支持母体から改革反対の声が上がってくる。これを受けて行くとすると、改革反対という声になるのである。別に民主党のことをあげつらうつもりで言うのではないが、「憲法改正」という字句で一番影響を大きく受けるのは、この間までの革新系政党である。かように、ひとたび体制というのが出来上がってしまうとその慣性力はものすごく大きいのである。その影響から逃れるための方法は、そう多くない。
一般的にやられるのは、時限政策にして常に見直しを入れるか、人が変わるたびに考え方を変えて行くことである。そして、すべてのものは変化するということを理解することが、国民の常識にならないといけない。平安から鎌倉への移り変わる時代の鴨長明はすべてのものが移り変わると自覚していたし、また江戸時代には芭蕉が「不易流行」を唱え、「すべてのものは変わる」という事実だけが「変わらない」ということのみが理解できる知的レベルを備えていた。ところが、昨今の世界経済の動きの中で、日本だけが突出して変化に対する対応を拒否し続けてきた。政治、経済、学問の世界がそれらの典型であった。
しかし、個人レベルの才能が発揮される分野ではだいぶ違っていた。音楽の世界では国内だけでの成長ではすでに限界があり、国際的に活躍する音楽家は次々と出てきている。それと同じことが、スポーツの世界でも起こっている。サッカー、そして野球など日本人の活躍が、世界の舞台で起こっている。これは個人という、主体性を発揮できる環境では能力のある人にとっては、国際的な活動が可能であることを示しているし、日本人のレベルも世界に伍しているといえる。大変うれしいことである。
このことから、すぐに思い出されるのは、日本人の集団行動による国際化であった。農協が世界ツアーに出かけ、集団活動が製造技術の世界標準になった。こんなことはつい20年もたたない前のことである。集団性の強さを見せ付けられた世界各国は、その後日本から学び、今ではTQCはサプライチェーンマネジメントとして、よりダイナミックな見方で世界中の産業界に取り込まれている。また、お客様は神様ですという言葉は、カスタマーリレーションシップマネジメントへと形を変えながら進んでいる。その背後には、日本ではまだ十分機能していないITというツールを使いこなしながら進む仕組みも出来上がってきている。
現在の日本は、多くの点で行き詰まり状況であるのは事実であるが、過去の人々のメンタリティーを考えると、過去を統合的に総括しながらITの次にくる情報システム革命の伴った技術開発のところで、再びチャンスをつかむようにすれば、世界で活躍できる場もまだあるだろう。そのためには、ひとまず過去を捨て去る勇気と、知恵を持たなければならない。そのために、どのようなものの考え方をするのかを、このシリコンバレー情報で「丁寧に」扱って行きたいと考える。
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