教えることと学ぶことは、一対の言葉のように考えてきたけれど、どうもこれは考え方が違うようだ。以前は、教える人に教えるものがあったと思っていた。たとえば、掛け算とか、飯盒でご飯を炊くと言うような技術がそうであった。しかし、技術という中に盛り込まれない事柄、たとえば、政治家と芸術家はどちらが世界平和に貢献しているか判断する基準とか、プロスポーツ選手と経営者は稼ぎ高が大きければ優秀と評価して良いかなど、教えることの難しいことがたくさんあることがわかる。社会生活をしていると教えることができない項目のほうが圧倒的に多い事がわかる。そのときに人は、何から学んで何を考えるであろうか。ここに、教えられないことを学ぶということが発生するし、それが結果的に人間の価値観の多様性を生み出すこととつながっている。教えることを考えてみれば、教える人が意図したことがそのまま伝わることもあるし、逆に学ぶ側からは反面教師として、教える人から学ぶことも多くある。ここでは、個人がどのように学ぶことと向き合っているのか考えてみたい
教えることは、相手を知った上で可能となる
教えることは、その個人のレベルやニーズに合わせることによりはじめて意味を持つことが多い。これは古くから言われている「卒啄の時」といわれる、ものである。時宜を得た教えが、それを必要とする相手にしっかりと理解されるときである。このことは、個人のレベルでは重要なことを示唆している。すなわち、同じ事柄でも、タイミングが異なると、理解が異なるあるいは、理解されないということである。教える側としては本当に理解されるときを見極めることがもっとも重要になるのである。掛け算やご飯の炊き方はそうではなく、必要なときがそのタイミングと考えることができるけれど、多くの、知りたい事柄の多くはニーズ先行だと思う。すなわち、知りたい時が教え時である。
我以外、皆師なり
かつて、「宮本武蔵」などの長編小説を書いた、吉川英治という作家は、揮毫にこう書いた。「我以外、皆師なり」と。これは、氏の晩年になっての言葉であり、人間の生き方をさまざま考えることでたどり着いたひとつの結論である。私は、この言葉は誰にでも、いつにでも当てはまる真理だと考える。それは、人間が肉体的には新陳代謝を続けながら生きる生物であり、精神が肉体を誘導する仕組みを持った構造と良く合致していると思う。すなわち、刻々と変わる変化に次々と対応して行くのが、人間の持つ重要な機能であり、変化に対応して生きて行くには、いつも外部から学ぶことが重要と考えるからである。
教育の本質は絶対評価
また、学校時代の勉強や受験などでは、相対評価が大きな意味を持っている。しかし、それは2つの意味で間違っている。ひとつは、評価をする範囲を狭くしていること、次は、相対優位は、時として価値を持たなくなることである。良く言われるのは、日本のプロゴルファーは、賞金獲得金額は世界レベルになったけれど、世界レベルでの活躍は多くない。このことは、閉じられた世界での競争というのは、限られた意味しか持たないということになるからである。さきのUSオープンで優勝したタイガーウッズはCNNのLarry King Liveという番組で、ゴルフの試合で本当の競争は「自分自身」と「コース」にあるといった。これが、究極の学ぶということへの原動力であると思う。自分自身をより良くしてゆくために、あらゆる限りのことをする。そのためにどのようにするのが合理的で正しいことなのか、これを学ぶことがまず第一である。
身の回りにある勉強の種
学ぶというと、学生時代の勉強を思い出して、楽しくなくなることが多いけれど、自分の興味にしたがって、学ぶ種を探してみたらどうだろうか。これは、なかなか面白く、私は、これこそ究極の勉強だと信じて疑わない。役に立つかどうかでなく、興味の続く限りやるのである。自分がどこにいるのか一番知っているのだから、手を抜いたら面白くなくなるし、突き詰めるにきりがない。そして、万一突き詰めたらその分野での第一人者は間違い無しである。こんな人たちが増えると、個性の発揮できる社会が可能になるように思う。
間違いを直すことも学ぶこと
日本人は、間違いを起こすことに慣れていない。これは、学校教育が大きく影響していると思うけれど、たとえば、「英語を間違える」ことにこんな敏感な国民はないように思う。アジアの国々の人など、英語でも何でも、主張することが先にあり、言葉は後という感じでしゃべりまわる。これは日本人は真似しにくいけれど、損している部分であると思う。間違いを直すことは必要だけれども、間違いを犯すことを恐れてはいけないと思う。この日本の閉塞した状況を少しでも、活力のある方向に変えるのは、間違いを覚悟で一歩進み出すことだと思う。
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