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【復刻】 108 経済効果について 20000603

経済効果という言葉は、定義を明確にしないとあいまいになってしまうけれど、米国をはじめとする各国が好景気の持続をしていることを横目で見ると、日本の景気対策は何かおかしい気がする。それはひとえに、直接支出が経済効果を生み出すと考えているためではないかと思い始めた。今、ベンチャーだとか、E-Businessのような言葉が飛び交って、つい先ほどまではNet株が高値をつけていた。しかしその実態は必ずしも、経済効果を生み出すほどのものではなかった。これは、今までの支出の仕組みを考えれば、やむをえない帰結である。すなわち、既存の延長にしか支出をしないで、ベンチャーの人たちがんばってくださいというわけである。今までの経験で言えば、ベンチャーを始めるための建物を用意してから、さあベンチャーを始めてくださいというわけである。各地方にある建物は、そんなでき方をしているから、管理費も高くて肝心のベンチャーが入れないと言う笑い話まであるくらいである。ここでの、経済効果は建築にかかった資材と、労力の合計であろうし、完成した後の資産価値は、その中に入った人たちの支払う家賃分と言うことになる。
もう少し考え方を広げてみよう。通信分野でNTTとかDocomoとかが経済効果を大きく出しているともてはやされている。しかし、通信と言うのはインフラのひとつであり、あくまでも手段である。世界はこの手段を使っていかに価値を生み出すかでしのぎを削っているわけである。このコストが高いと、世界に価値競争のできるビジネスが生まれないことになる。これを少し考えてみたい

直接支出の先は、すぐ見える世界
景気対策ですぐに出てくるのは、建設支出であるが、これはすぐに雇用が発生し、出来上がれば「もの」として見えるから、消費していることはわかり易い。そして今でも、昔のままの計画に従い、過疎の村にもどんどんと道路ができ、不要な治水工事なども計画的に行われる。これは、あくまでも予算を流し込んで支えている事業だと思える。これを、政府が常に行っているから、新規事業に振り向けられる予算と言うのはほとんど発生しない。しかし、建築物を建ててそこでの事業によって収益をあげることを考えてみよう。このときに一番重要なことは、いかに安く作り、使えるかと言うことである。バブルのころ建てられた東京のビルが外国資本に買い取られる様子をTVで見たことがあるが、外国資本はあくまでも運用価値からしか値段を算出していない。これは資金運用の観点でも当然のことであり、経済原則からすれば当然のことである。番組ではバブル時の価格の1/10まで下げてやっと買取が成立した様子が映っていた。経営改革に行き詰まっている日本企業の多くが、不動産投資によって傷を受けていることからも、この分野での支出は極力避けたほうが、長い目で見て経済効果には良い影響があると考えられる。

安いことは豊かなことと同じ
日本は、所得水準では世界でもトップランクになってきているけれど、それに合わせて食費や住居費などが高いので、あまり豊かな実感はわかない。これは、海外に旅行や買い物に行った人たちが一様に感じることでもある。すなわち、生活必需品を安くすることが、生活を豊かにすることになるのである。

経済効果と豊かさ
現在の日本の経済指標に合わせると、直接支出に予算を回すことで経済効果を表す指標は良くなるのであろう。しかし、国民が豊かにならない経済指標などは、意味のない数字である。この悪循環を断つには、直接効果の先を考えることが必要になってくる。これができるのは、事業を育ててきた経験を持つ人たちであると思う。その思い入れと、実績が変革を導き出す大きな力になる。護送船団に入っていた業界は現在状況の良くないところが多い。これは、調整型の事業が活力を失った例である。しかし、現在事業を持っていることは、将来の展開を持ってやるわけだから、それらの経験者こそ、仕組みを変える事ができるであろう。官尊民卑の因習はあるとしても、もはやこの国の将来を考える人が事業経験者でなければ務まらないことを意味する。

インフラの安い社会
インフラは地域に即しているものが多いので、これは意図的に管理しないとその地域人たちは大きな影響を受ける。道路や、電話料金や、電力など米国では政府の指導で価格の低下が進められているのに、日本では既得権の温存で何も変わってきていない。(あえて言うと、ADSLの通信料金は安いと言えるかもしれないが、まだ限定地域だけである)これだけ新技術、新事業を創出すると言う掛け声は良いけれど、その成果指標が“経済効果”であるとすると、現状の日本は強くなれないし、国民が豊かになれないことになる。インフラを安くして、新事業が創出しやすくなることこそ、行政主導のポイントであると考える。今のままでは、経済効果のための施策は出るとしても、実質的効果を生み出すことにつながらないと思えてならない。

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