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【復刻】 104 企業文化とカルチャー 20000621

米国の会社が新しいカルチャーを創出しているのは、目新しいことではない。エンターテイメントというものを、文化として定着させたのは米国の20世紀の大きな発明であったわけで、その延長上に企業が発信して行けば、企業からの文化あるいは、作られたカルチャーへとつながることになる。いくつかの例を見て、 ヴィジョンというものが与える影響の大きさを考察してみたい。

お正月にはコカコーラというメッセージ
コカコーラは、人工的な技術で作られて、大きなマーケットを形成した特異な飲料である。これが、なぜそれほどまでに受け入れられたのかは良くわからないが、マーケッティングの成功であることは間違い無い。コカコーラはアトランタに本社がある。ここでは見学ツアーがあり、コカコーラに関する資料やデータがいろいろそろっている。その中で、世界のお正月の習慣を紹介する映画があった。日本の紹介を見ると、家族そろって着物を着てお正月の食卓を囲んでいる光景が映し出され、そして、家族そろって、コカコーラで乾杯している姿が出てきた。自分としてはとても不思議な気がしたが、コカコーラの立場からすれば、もっともな内容であろう。日常的に売れているわけだから。これが、コカコーラの戦略の一環であることがわかる。

カルチャーを変えた企業
カルチャーを変えた企業は数多くある。日本では、10年以上前にCI(Corporate Identity)を確立することがブームになったことがある。結果的には会社のロゴや社員バッジを変えるということでいろいろな会社がいっせいに動いた。結果は、ご存知のとおりで、中味は変わりばえせずとも、ロゴが変わったという程度のものであった。このような外側の改造については、私はむしろ私服で働くことができる企業の輩出という意味で、米国西海岸の会社は、チャレンジングであったと思う。実際私服での勤務は気楽なものである。そして、肩肘張らない関係になりやすい気がする。日本でもいくつかの会社は採用しているようであるが、まだまだ主流にはなっていない。混み合う電車の中、背広姿のサラリーマンの姿はあまり変わっていない。ただ、一時のドブネズミルックと呼ばれる姿が、健在なのはうれしい。仕事で着る背広は、やはりドブネズミルックがいい。これは、衣料会社が、サラリーマンにカラフルな背広を着せるための戦略であったと思うけど、日本人の保守性が正解になったひとつの例であろう。仕事は、目立たぬようにするのがいいのである。

会社の精神
米国では、会社のやり方をナントカウェイという言い方で特色付けることが多い。私の知る限り、Hewlett Packard社(HP)は、革新的なコンセプトを入れてきたと思う。それでも、今回の分社化では、そのウェイ自身に問題があったということであるから、社会の流動の中での企業というのは「変化」を前提に経営しなければならないということが言える。私がひとつだけすごいと思ったのは、HPは従業員が、自ら成長することを前提に仕事を与え、成果を期待するところと、会社に合わなければ、自分のやりたいことをやるために、外へ出て仕事をして良いというところで、しかも、もしHPに戻りたくなったら、喜んで迎えるというくだりのところである。これは、シリコンバレーに優秀な人材を供給した大きな仕組みのひとつであり、成長することを支えるという意味で、すばらしい仕組みだと、つくづく思う。

SONYも出戻りを認めている
先日、経済誌でSONYの再雇用の仕組みが目についた。昔MOでお付き合いした課長の名前が出てきた。MOの開発に区切りがついたところで、ゲーム会社にトラバーユしたと聞いていたが、再びSONYに戻ってきたのだった。さすがSONYという感じはしなかった。これで無ければ企業は生き延びられないとSONYが気がついていることがうれしかった。企業のカルチャーはそれぞれどんなものであっても良い。大切なのは、企業が成長するためには、個人が成長する仕組みを作らなければ、成果を期待できないということである。SONYがそこに気づいて動き出しているのはすばらしいことだと実感した。

企業と個人は対等
ここで見られるのは、企業のメッセージである。企業は成長したい、それと同じことを、個人にも認めるという話である。すでに起こってしまったIT革命と呼ばれる現在の状況では、いかに優れた個人を集めるかということで、すべてが決まってしまう。それを、対等な関係で進めるHPの企業精神は、今の時代でも輝いていると思う。そして、日本ではやはりSONYなんだ、ということを実感した。良くも悪くも、優れた企業になるにはカルチャーを作るくらいの心意気が必要だと思った。

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