【復刻】 102 第六感なるもの 20000404

前回は、アナログとデジタルということで、人間はデジタルという要因から成り立っているということを述べたが、デジタルの認知系とは別なのかどうかわからないけれど、無意識のうちにデータ処理をして、ある決断や、判断をするということが経験的に良くあるように思う。もともと、人間の行動や
思考は必ずしもロジカルではない。振り返ってみるとなぜあんな理屈に合わなかったことをあの時してしまったのだろうか、なぜ右に行くはずの道を左に行ったのだろうか、など日常的な事柄では数多くあるように思う。私などなぜこんなにPCを買ってしまったのだろうかと、狭い部屋に並んだマシンを眺めてそう思う。これは、判断がロジックばかりでは成り立っていないということから由来していると思う。その中で、第六感なる多分人間だけがもつ、判断ルールを考えてみたい。先ほどあげた例は、第六感と言うよりは「ぼんやり」に近いけれど、人間の行動様式を考える上では第六感も重要な存在だと考えられる。

Knowledge Managementとロジック
ロジックだけで人間社会が成り立っていないことは、すべてのルールに例外が存在することですぐ確認できる。たとえ言葉の上でロジカルであったとしても、運用面での例外はいくらでもある。このロジカルでないところからロジカルにする仕組みに、創造性があると見抜いたのがKnowledge
Managementである。人間が、自らは認識していないがなぜか判っていることことを暗黙知として、それらを持つ人々が、その知を交流することで創造的な具体的な方策、いわゆる形式知に到達できるというのが、野中郁次郎氏の主張である。これは、人間の認識という面から見て二つの意味
で重要な点を含んでいると思う。まず、意識されない知があるということ、そしてその知を交流することで、人間のできる具体的なことが生まれるということである。前者は認識されていない意識といえるし、後者はロジックを含めたかかわりの中で生まれるものである。ここで重要なのは、交流が
あって初めて具体的な形になるということである。このことは、人間が社会的存在と呼ばれる大きな理由になると思うし、デジタルから成り立つインターネットがその環境を整えていることと無縁ではないと思う。

認識の究極は第六感か
第六感というのは、いろいろな人の経験談を読んでみると、重要な意思決定のときに生じていることが多いように思える。結果的には偉大なことを成し遂げた人でも、きっかけはふと思ったことを追求して行くことによってはじめられていることも多いように思う。そうなると、ロジックも重要ではある
が、それはあくまでも、具体化するための手段として重要なのであって、何を成し遂げるかという点では、第六感のように、ロジックでではないものが重要であるように思える。20世紀はどのように物を作るかという意味では、驚異的な進歩を遂げた。フォードの大量生産方式が広まった時代である。これは、ひとつの限界である、世界の隅々までの供給ができるところまできてしまった。その世紀の終わりに獲得された、インターネットを含む情報革命は、どのようにということから進んで、何をするのかをわれわれに問い掛けているような気がする。その中で、ロジックだけでないところにその答えが出てくる気がする。カオスの世界から新しい秩序が出てくるように、現在のロジックに乗らないところから、新しいものが生まれる。これは、アジアの古来からの思想と通ずるものがあると思う。すなわち老荘の思想ではないかと考える。古来の直感に関する考察が次の時代を切り開くカギになると思われる。アナログのもつあいまい性は、デジタルに基盤を持つデジタルにゆらぎをもたらすように思える。第六感だけでなく、ロジックを超えたところに、次の時代の方向性が生まれる素地があると思う。