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【復刻】 101 アナログとデジタル 20000331

ヒトゲノム解析も、セレーラジェネティックスの奮闘で、国家計画よりも早く全体解析が終わろうとしている。この解析結果が人類に与えるインパクトは予想がつかないということになっているが、いずれにしろ、人間の生体内たんぱく質合成の基本メカニズムが判るのであるから、病気の治療という応用分野のみならず、世界観にまで影響することになると思う。いずれにしろとんでもない時代になったことを痛感する。これも、デジタルという手法が活用されて展開した部分であるので、人間とデジタルのかかわりを考えてみたい。デジタルとは、ここでは分離して数えられるもの、アナログとは連続的でどこまでも切り分けることが不可能な状態と考えることとする。

 

人間の本質は、デジタルである
DNAも分子構造を見れば、アミノ酸の配列でありそれぞれの分子は結合するか、切り離されるかのいずれかの状態で安定になる。これは、人間の物質的な部分が、個別に構成されるということであり、数えられることから、デジタルと考えられる。もう少し大きな状態である、細胞を考えてみる。細胞は体内でいろいろな反応をする。たとえば痛みや、熱さなどなどの外部からの刺激には、まったく反応しないという状態か、反応するという状態のいずれかひとつを取る。これは、刺激に対する「閾値」という考え方で説明される。「閾値」というのは、ある刺激に対してちょうど、スイッチのON、OFFのような働きでこれはデジタル回路で言うと0、1に相当する。細胞の認知というのは、実はそのON,OFFで認知さるとか、されないと決まる。

確率という概念
ところが、個別の細胞の反応はON、OFFであったとしても、人間の体には60兆の細胞があるという。全体から見ると、一つ一つの細胞の反応は、60兆分の1の大きさでしかない。すなわち、ダイオキシンの検出感度のさらに6000分の1の単位の反応の集合体ということになる。そこでは、個別のデジタル反応は集合した集まりとなってわれわれに知覚される。しかも、ひとつの細胞の寄与は決して大きくないから、集合体自身は不連続な値でありながらも、連続的に感じられれる。たとえばお風呂のお湯の温度を上昇させながら湯船に浸かっている場合を考えてみる。ある温度以上で細胞が熱いと感じるとすると、それは熱いと認識する細胞の数が徐々に増加して行くことの結果になる。細胞ひとつひとつを考えてみれば当然不連続な増加であり、反応した細胞の数の総数が体の熱さの反応につながることになる。その結果、熱い風呂から飛び出すとか、水を入れて湯の温度を下げるとかの行動につながることになる。

アナログというもの
この説明でデジタルが人間の本質であることは、ご理解いただけたと思うけれど、自然界のそよ風も実はデジタルである。その理由は風の本質は、空気分子が細胞に衝突することで、発生するからである。しかし、空気の中にある分子数は途方もなく大きいのでわれわれには、あたかも連続量(アナログ)のように見えてしまう。では、空にかかる虹はというと、これはアナログで変化するように見えるし、波長というのは連続的に変化させるのは可能なので、理論的にはアナログで考えて良い。しかし受け手の側の人間は、視覚細胞の数が有限であることを考えると、デジタルで知覚していると考えられる。

デジタルが非人間的というのは誤解
よく世間では、アナログは人間的でデジタルは非人間的であるという議論が聞かれる。しかし、基本的な認知や認識がデジタルであることは確実なので、アナログの議論は意味を持たないことになる。そこで、20世紀の物質観や生命観は(閾値の認識は例外として)アナログ的であった。デジタルの出現によって生態系を正確に表現できることとなったと言える。これがデジタルと人間観の融合である。では、アナログはといえば、本質的には仮想的(バーチャル)に存在するものであり、ひとたび実体となって現れたときには、デジタル化されたものとして、人間に理解される。この仕組みで考えれば、アナログが人間的でデジタルが非人間的というのは、認知や認識に関しては当てはまらない。アナログというのは、人間の想像力としての結果あっても良いと思うけれど、それは常に実体ではなく、あくまでバーチャルである。この考えは従来の常識とは違うと思われるかもしれないけれど、これだけデジタルが進化してきて要約到達した基本認識であり、非常に重要な考え方だと思う。

 

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