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【復刻】 095 日本的なものと西洋的なもの その8 19991120

大政奉還が、平和裏に行われた陰には薩長連合や勝海舟と西郷隆盛の会見など、一人一人の志と、命を懸けた使命感で、舞台が作られた感じがあります。しかも誰か一人が欠けたら、成立しなかったであろう危うい状況もありました。特に幕末の10年間は本当に、武士階級から天皇を国家の中心とした社会への推移として、実に見事に移り変わった時代だと思います。もちろん、戊辰戦争のような内乱にはなりましたが、それでも国としての大きな動きは、一つ一つ着実に進められて行きました。

 

岩倉使節団と言う、700日間世界一周の旅
1871-1873まで、条約改正の準備をするために岩倉具視を特命全権大使とする、岩倉使節団と言うのが、米国から入り欧州を回って、世界一周をしました。その時のメンバーには、大久保利通、木戸孝允、伊藤博文、山口尚芳らの行政職だけでなく、中江兆民、津田梅などのメンバーがおりました。条約改正と言う当初の目的は必ずしも達成できてはいませんが、西洋の文化を現地で見て、取り入れると言う点では、とても思いきった事をしています。すなわち、約700日間と言う時間をかけて、出かけていった事、そして団長には全権が与えられていた事。その中で津田梅は8歳であり、しかも米国に立ち寄った後10年間そこで生活をしてから、帰国した事などです。現在に比べれば確かに船に乗っている時間は長かったでしょうし、スエズ運河が開通したと言っても、世界一周にはずいぶん時間がかかったことでしょう。(当時、ジュールベルヌの「80日間世界一周」というのが書かれました)

学ぶはまねぶ
ここで、重要な事は日本は、欧米から学べと言う事に気がついて行動したところにあります。これは、歴史を振り返れば、紀元600年頃に派遣した遣随使、その後遣唐使という、使節団を送ったのと良く似たかたちをしています。隋、唐の時代にも400人から500人くらいが、通常4隻の船に分乗して、海を渡ったとあります。そして、通常は2-3年滞在した後に日本に帰ってきました。(平凡社マイペディアによる) もちろん、航海の安全性は今よりはるかにに低かったでしょうから、文字通り、命を懸けて学びに行ったと言えると思います。そして、学んできた学問や風習などを、日本の事情に合わせて変化させていったのが、平安文化や、仏教の浸透と大きく関わってくる事になります。明治政府は、この事を改めて欧米に対して行ったわけです。そして、ご承知のように、西洋の学問体系や、文物、衣食など多くのものが日本に入ってくる事になりました。しかし、津田梅の滞在のように、現地での生活や学習体験で、背後にある生活まで含めて見る立場は素晴らしい事だと思います。まさしく、学ぶと言う言葉の語源が、まねぶ(真似ぶ)と言う事を知った上での選択だったわけです。その結果が、津田塾大学の成立であったり、中江兆民のように、自由平等の思想を伝える事で活躍する人などが出てくるわけです。

教える人達がいる
遣随使や遣唐使などの他にも、鑑真和上のように、日本に渡って来て仏教を広めてきた人や、ザビエルのようにキリスト教の伝道に来た人などもいます。またジョン万次郎のように、漁民の子でありながら米国でしっかりした教育を身につけた人もいます。そう考えると、教える事がある国は、すべてを教えてくれていたのかも知れません。その事は、自国のアイデンティティが何であるかの自覚と一体のものだと思います。そう考えると、明治の初期の岩倉使節団と言うのは、これから学ぼうとする日本の姿勢が、素直に現れた代表に見えます。ここで見落とせないのは、その人達を教えると言う事に協力してくれる人がいたと言う事実です。これは、時代の要請と言う事もあるでしょうが、学ぶ姿勢を持つ人だけに与えられる特権のような気がします。学ぶ気持ちは、いつまでも持ち続けたいですし、人に教えてあげる事が出来たらどんなにか素晴らしいでしょうか。明治をさかのぼっているうちに、飛鳥時代にまで楽しく見る事が出来ました。

 

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