米国と日本のサービスを比較する上で、タクシーというのは面白い要素を持っているように思います。ニューヨークと日本の大都会のタクシーの比較をしてみたいと思います。これを選んだ理由はそれ以外に、あまりタクシーに乗る機会が無いからです。
賃金の支払い方
米国では、タクシーの運転手はチップで生活をします。会社からタクシーを借りて、その売り上げは会社に入り、チップが生活費となります。ですから、彼らはトランクに荷物を入れるときでも、必ず席から降りて、手伝ってくれます。これは、お客の快適さ(と自分の実入り)を考えているせいだと思います。それから、州によってはタクシーである範囲外に出ると、タクシーの帰り道の分を一部負担させられることがあります。チップは料金の15%が目安です。
日本では、会社から借りて月間の売り上げのうち55-60%を自分の収入としているそうです。私は、大きな荷物を抱えてタクシーに乗ることが多いのですが、日本では、運転席からトランクを開けるだけで、それ以上やってくれるタクシー運転手は、非常に珍しいです。これは、私がチップを払わないせいだと理解しています。そして、近距離歓迎とステッカーの貼られたタクシーに乗ったところ、行き先が近いと判ったときから、運転手の人が黙ってしまったり、稼ぎを上げるのが大変という事情が感じられる経験をしたこともあります。
車の質、そしてたばこの臭い
10年前にNYCに行ったときには、でこぼこのタクシー(イエローキャブ)でしたが、最近何回か行ったときに気がついたのですが、すべて新車のタクシーに変わっていて、でこぼこのタクシーなどにはお目にかかれませんでした。NYCは治安と、タクシーは大幅に改善されたと実感します。たばこはと言えば、車の中でたばこを吸う運転手の人は少ないので、室内は臭くありません。日本のタクシーでは、車両はすばらしいものがあります。特に個人タクシーの車両は、自家用車の上級クラスのものもあります。さすがに、日本の工業製品は出来がいいと納得できます。ただ、たばこはほとんど、気に掛けられていません。すなわち、運転手の人がたばこを吸う車両に当たると、染み付いたたばこの臭いが充満しています。タクシー乗り場では、禁煙車を選べませんので、仕方なく臭い車内で、我慢をすることになります。私は、この時間は嫌いですし、少しくらい高くても、すがすがしい空気の吸えるほうが良いと考えています。
運転技術は
NYCのタクシーには、アフリカンアメリカン、中南米系やアラブや中国など、実に多くの人種の運転手がいます。しかし、それぞれ実にアグレッシブ(攻撃的に)運転します。割り込み、追い越し、なぜそんなに焦るの?というくらい先へ先へと急ぎます。きっと、稼ぎをもっと取るための、生活のノウハウなのでしょう。余談ですが、NYCのタクシーの運転と、サンフランシスコの坂の道は、どちらもアミューズメントパークのスリリングな乗り物という感じがします。
日本はというと、最近はあまり無茶な運転にはお目にかかりません。結構紳士的な運転になっているようです。乗って安心という感じでしょうか。
日本での経験
今年の夏休みに、京都を回ったとき、タクシーの乗り比べをしました。実はMKタクシーという京都に本社のある、タクシーを選んで乗ってみたのです。これが実に快適でした。宣伝するつもりはありませんが、先ほどの項目にあわせて結果をまとめてみると、次のようになります。
車両は、清潔そして、運転手の人はきちんとした言葉づかいです。お客の言ったことを確認する、など、きちんと教育されていることがわかりました。もちろん、たばこの臭いは、どのタクシーにもありませんでした。しかも、料金が安いのです。このタクシーのことは、以前から友人に送ってもらったテープや、メールマガジン仲間の伴さん(Mag2の萬晩報を出している方)のレポートでも、読んでいましたが、実際に体験すると私と私の家族にはとても快適でした。
この会社は、このような教育だけでなく、英語でガイドの出来る運転手の養成をしているとも聞きました。私の家族が、報国寺を尋ねたときには、MKタクシーの運転手さんが、そのお寺の文化財保護をしているとのことで、普通には見られない場所も案内してくれたそうです。家族は大変喜んでいました。このように、仕事の中に自分が出来ることを加えるのは、これからの日本人の生活の質の向上を考える上で、面白い点ではないかと思いました。
MKタクシーの現場の声
このように、私なりには満足できるMKタクシーでしたが、運転手の人に聞くと必ずしも、すべての人が満足しているわけではないようでした。一人の運転手のひとは、会社のイメージは良いかもしれないけれど、給料は業界一低いし、待遇は良くないよと言っていました。大多数の運転手の人は、満足している、あるいは誇りに思っている、と言っていました。
どこも、不況だよの声
タクシーに乗ると、私は運転手の人に「景気はどうだい?」と聞くのですが、誰もが「だめだよ」と言います。どうも、あの「バブル」を基準にしている感じがあります。あの「バブル」をこれからも待ち望むのかと言えば、そうではないと思うのですが、どうも比較の軸がずれているのではないかと言う感じです。それでは、何かをしていますか?と問えば、別に今までどおりと言う感じです。このあたり、日本のタクシーには、自分で出来ることを自らするという点で、伸びる余地ありと私は見ました。
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