【復刻】 054 ホームドクターは親切だ 19880927

最近、健康診断でホームドクターのところに行きました。検査の結果、成人病の可能性を指摘されました。血糖値とコレステロールが高いというものです。そこで、さっそく彼に、どうしたらいいのか相談しました。彼は、検査の頻度を上げて、毎月データを取りながら、そのデータに基づいて、具体的なアドバイスをしてくれました。その中で、米国の医療システムについても、見ることが出来ました。ご報告したいと思います。

予約が原則
ホームドクターというのは、家庭医とも訳されますが、その家のかかり付けのお医者さんです。たいてい子供のころにかかりつけのお医者さんをホームドクターにするのが普通のようです。いろいろ具合が悪くなったときに、まずはじめに相談する先生ですので、家族一人一人の病気や怪我の履歴、体質など、良く知っています。我が家のホームドクターは日系２世の先生で、日本語も少し出来る人です。緊急の場合以外は、実際見てもらうときには、予約が必要になります。私も、今回はずいぶん立ち入って相談に乗ってもらいました。

検査は外の専門機関で
米国の、ホームドクターといわれる人たちは、あまり検査設備を持っていません。簡単と思われる、血液検査でも外の検査機関を利用します。私の場合、次回診察の予約日を決めると、その数日前にホームドクターのオフィスの近くにある検査機関に行き、そこでまず血液検査をうけます。2-3日たってそのデータが出たところで、ドクターと会う日となるのです。検査機関には、検査の専門家が、（私には看護婦さんのように見えましたが）、手際良く検査をしてくれます。ここは、予約も要らずほとんど待ち時間も無く、検査をしてくれます。ここでかかった費用は、そこで支払いをします。

保険制度も外注制
米国の企業が加入する医療保険は、HMOというのとPPOという２つに大きく分けられます。
HMOというのは、保険会社が指定する医療機関を定めて、そこで受診することという制約のあるもので、PPOというのは、保険会社による医療機関の指定が無いものです。これも、州毎に指定内容が変わったり、また保険会社によって、給付内容が変わったりします。ですから、人事厚生担当者は、より良いサービスをする、よりコストの安い会社を探すのは、大切な仕事になります。また、保険会社は、サービスの向上で顧客を増やすことを考え、医療コストの削減で、収益の向上を目指します。この保険の機構を日本と比べてみると、やはり、外注ということがいえます。すなわち、日本では国民保険とか、政府管掌保険とか、健康保険組合という個人が所属しているところの機関に出資して運営されているのに対し、米国は、個人の所属とは別に、それをビジネスにしているところに、発注するわけです。この点は大きな違いだと思いました。

データそして、プロセス
私は、3ヶ月にわたって、ホームドクターの指導を受けました。はじめは、軽いエクササイスを薦められました。しかし、それでもあまり改善点が見られなかったので、次は食事内容の相談、そして、3ヶ月目には、専門の栄養士さんを紹介してくれて、その人のところに出かけていって、食餌療法の考え方、詳細なメニューまで教えてもらいました。その成果があって、どうやら要注意から正常の範囲へと数字は変化しました。私は、以前は軽いジョギング程度しかしていませんでしたが、後半には水泳などを生活に取り入れるようになりました。これは、ホームドクターのおかげです。彼が、私ができることを、いろいろサジェスションしてくれたものですから、私も自分でできることを選択できました。この間にも、ジョギングをすると昔の足首のねんざ跡が、痛んだりしました。それも、すべて検査項目に入れてもらって、状況を正確に把握することが出来ました。

お医者さんもサービス業だ
以前に、我が家の子供が、この先生に、家庭内の問題を相談したところ、この先生はとても親身になって相談にのってくれました。同時に私にも、子供のその後の様子などをいろいろ聞いてくれました。家庭内のことまで気に留めてくれて、私は少し驚くとともに、それも自分の仕事と考える姿勢はすばらしいと思いました。この話は別としても、今回の経験で、私はお医者さんも、患者さんの要望を聞きながら手を貸してくれる人だというのを、認識しました。そして、患者を励ましながら、治療が出来るのが、いいお医者さんではないかと思いました。信頼関係の重要性というのを、再び思い返す、今回の経験でした。その意味で、我が家のホームドクターは、信頼できるいい先生であると思いました。