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【復刻】 049 小売りについて考える 19980624

最近、シリコンバレーで展開していた日本から進出したパソコンショップが、小売り部門を閉鎖する事態が発生しました。時々、日本語のソフトや雑誌などを購入したり、重宝していました。無くなってしまうと、不便になるので困る事もあるのですが、いろいろな面で小売りというビジネスを考えさせられました。米国の小売りにしても、今後の成長を疑問視する考え方も出てきています。今回の件とあわせて、考察してみたいと思います。

 

地域一番店には、歯が立たない
今回の、日本からのお店はT-Zoneです。それはfry‘sという品揃えでは地域一番のお店の真ん前に出店しました。品揃えはfry’sよりも少なく、ねらうお客は、アジア系の人々と、地元の人々です。
現実に起こったことは、T-Zoneでアジア系のもの(ソフトウェアが中心ですが)を手に入れるにはいいのですが、他のパーツやハードウェアでは、fry‘sの品揃えにかなわないのです。そうすると、お客はT-Zoneでは用事が足りない事が多いので、自ずとfry’sへと先にいってしまうということになります。ここでは、地域一番店の強さが、明確に表れています。

アジア系の人は、英語のソフトを買う
そして、ターゲットとした、アジア系のソフトウェアは、日本人向けを除いては、あまり売れなかったようです。その理由は、アジア系の人のうち、出身地のソフトにこだわるのは、日本人だけである事が分かったそうです。たとえば、アジア系で一番住民の数の多い中国人の場合には、米国の永住するつもりで来ている人がほとんどであること、中国語と言う中味には多くの方言があり、ソフトの対応が十分でない事などで、現実には英語のソフトウェアを購入するケースがほとんどだそうです。これは、ベトナムや韓国からの人たちにも当てはまるそうです。その中で、日本人だけが、日本語にこだわっているそうです。このことは、それぞれの人々の置かれた背景や、米国での仕事の進め方に大きく左右されると言う事が言えると思います。

小売りの強みと弱み
私は、小売りというのは在庫を抱え、スペースを確保して売るということで、コストのかかる体質だとおもいます。その証拠に、あるパソコン用品のチェーン店では小売りの店頭にならべるためにメーカーに対して、いろいろな販売促進費用を請求します。チラシへの掲載料、棚に並べるスペース料、売り上げ数量に応じたリベート、もちろん通常のマージンもです。このような積み上げで、この小売りチェーンの取り分は商品価格の35-40%にまでなることがあります。もちろん、末端価格はカタログ販売とも競争できるレベルでないと生き残れませんので、売り値は安く設定されるわけです。
そうすると、メーカー側としては、商品のコストは少なくとも末端価格の半分以下でなければやって行けない事に成ります。しかし、現状そんなに安く出来る物ばかりではありませんし、かといって、商品の市場での認知度を上げるところとの兼ね合いで悩むわけです。

通信販売の納期
米国の通信販売は、輸送に関してはすばやい対応をしています。これは、パソコン関連の商品ですが、その日の夜10時までにカタログで申し込みをすると、商品は翌日の朝10時には届くのです。これは、ロジスティックスを考えると、スケールの大きな話であり、そのシステムは注目すべきものだと思います。あれだけ、広い大陸をそれだけのスピードで物を流せるということは、インフラがそろっているということになります。私の知り合いに聞いても、カタログ通販は価格も安いし、納期も早いと言って、ほとんどのものをカタログで購入している人もいます。

DellやCompaQの製造直売
小売りの高コスト体質に対して生まれてきたのが、製造者から消費者への直接販売という選択です。これは、中間のマージンを省略すると言う点と、在庫管理が的確に出来ると言う事で、パソコンを中心に大きく採り入れられてきたシステムです。インターネットを利用しながら、お客の注文をとり、早ければ2日後には商品が届くと言うものです。これは日本でもいろいろな会社が始めて、コスト削減に大きく寄与している事がわかります。これらの事が可能になったのは、部品の品質の向上、物流の安定、在庫管理情報処理のシステム化、インフラとしてのインターネットの利用など、いくつかの大きな技術進歩が背景にあります。もはや、製造者から消費者に商品が流れる時には、途中に問屋や、小売店が入らなくても動く時代になってきました。時代は従来の物流から情報流へと着実に変化してきていると思います。

小売店の未来は
そうすると、小売店の未来はどうなるのでしょうか。私は、ショールーム化へ進むと思います。やはり現物を見て、さわって調べると言うのは、人間の好奇心を満足させる大きな要因だと思います。
その中で、小売店がやれるのは、メーカーに対して発注端末を備え付けたショールームを持つ事ではないかと思っています。それは、在庫を持たずに、地域での小売りの集客力を維持する事の出来る、一つの方向だと思っていますが、皆さんはどのようにお考えになりますか。

 

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