米国で生活をしていますと、ガレージと言うのが多目的に活用されているのを感じます。毎朝ジョギングをして近所の開いているガレージを見るのですが、ガレージは実に様々な用途に使われています。2年ほど前にTIME誌で、米国の秘密武器「ガレージ」という表現をしていましたが、どんな使われ方をしているのか、具体的に検証してみたいと思います。
出入り口はガレージから
米国の家庭のガレージと言うのは、基本的には屋根付きで、家屋につながっています。ですから外出から車で戻ると、ガレージから家に入る事になります。ですから、玄関はあまり多くは使われないという事になります。しかも家からの出入りが雨にぬれずにできますから、屋内の一部と言う考えにもつながります。
物置そして作業小屋
ガレージの使い方で多いのは、物置です。我が家もそうですが増えてきたものを家の中に置くとすぐ一杯になりますので、どんどんガレージに置いて行きます。そうすると結構ガレージもふさがってきます。そうすると、本来何も無かった壁に棚をつけたり、ロッカーを置いたり、果ては工作機械や園芸用機械など置いてみたりします。立派な作業場としての機能を持ってきます。作業のための電源やユーティリティーなども揃えてゆきます。(因みに私の家の前の持ち主は、コンプレッサーと自家発電機を備え付けて、ガレージの壁には工具類が所狭しと並べられていました)
また、近くの人の家のガレージには、工作機械と呼べる旋盤やドリルマシンが、町工場のように並んでいます。これなど、さしずめ、ガレージ工場と呼べない事もありません。
HPのガレージ
Hewlett Packardのガレージはあまりの有名です。現在ではカリフォルニア州の史跡になっていますが、このガレージなどは現在見ると実に小さく、車1台が入るのがやっとと言う感じですが、ここから現在のHPが始まったのかと思ってみるととても感慨深いものがあります。そして、ご承知のようにAppleもガレージからビジネスは始まりました。TIME誌が、米国の秘密兵器と表現したのはこの様なスタートの切り方で、ビッグビジネスが出てきているということを示しています。
なぜ、こんなやり方ができるか
物理的には、スペースがあるから、経済的にはお金がないからというのが、ガレージでビジネスをスタートする理由だと思います。はじめに建物や装置を入れてしまうと、その経費だけで大きなリスクを背負う事になりますし、マーケットや技術の変化に対応するには、身軽なほうが良いわけです。その意味では、ガレージをビジネスのスタートポイントにするのは、合理的な選択と言えると思います。そこから芽が出てくれば、投資家を募って会社を作ると言うプログラムを始めれば良いわけです。
小さく生んで大きく育てる
この様なシステムは、組み立て産業の開発レベルにおいては特に有効だと思います。これが現在のシリコンバレーでの新しいビジネスの生み出し方に近いと言えると思います。ただ、ソフトウェアなどの場合には、ガレージも不要でPCにつながる環境さえあれば、仕事が進められるほど、機械や装置への依存度は小さくなって行きます。(ソフトウェアの場合、仕事の取り進めが、大きなネットワークで行われるところが違ってきますが)これらの育て方を見ていると、小さく生んで大きく育てる、という考え方が中心である事がわかります。これからの、大きく変化する時代には、独自にマーケットを創造できないのであれば、動きが速く、リスクを少なくというのが、重要なポイントになると思います。その意味で、ガレージと言うのはなかなか使い勝手の良いものであると思えるのです。
お小遣い稼ぎもガレージから
ガレージの別の使い方にガレージセールと言うのがあります。これは、家庭の不要なものをガレージや庭に出して、他の人に立ち寄ってもらい、気に入れば買ってもらうためのものです。骨董品や衣類、電気製品、本などいろいろなものが並びます。これが週末ですと近所で大体2-3軒の家が手作りのポスターを道路沿いに掲示して、お客を集めます。通り掛かりの人で興味のある人は、立ち寄って品定めをして、気に入れば買います。いくつか覗いた事がありますが、その日の終わりには大体のものが売れてしまいます。この売上げは、しっかりと家計に入るわけです。商品のリサイクル、再活用と言う意味で、面白いと思います。使えるものは使ってしまうと言う、米国の気質にマッチしているシステムだと思います。
そして、秘密兵器は今も健在
この様なガレージは、小さく始めるビジネスにはとても良い方法だと思います。それが思い思いにビジネスの種を生み出せるとしたら、TIME誌の言うところの、秘密兵器ということになるでしょう。私には、更に進んで、これら小さく出てきた芽を、大きく伸ばす仕組みと一緒に存在する事が、更に重要ではないかと思えるのです。個々を大切にして、育てるときには協力するという考え方が、大きく関わってきていると思えるのです。シリコンバレーにはそのような仕組みができていますし、今後世界で競争するときには、そんな相手と戦うという事を意識して、作戦を立てるべきだと思いますが、皆様はどうお考えになるでしょうか。
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