シリコンバレーでは失業率が3%以下で、とても低いと言われています。しかしこれは、見かけの数字であり現実の個人のレベルでは、転職やレイオフなど、随分と出ています。今のところ、労働力の需要が大きいため、比較的すぐに次の職が見つかるということで、このような低い失業率になっています。では、このような中で、レイオフや転職など、どのように進められるか、身近な体験も含めてまとめてみたいと思います。
レイオフは突然やってくる
米国の企業は、利益を出して株主に還元する事を第一に考えます。ですから社長の考える事はひたすら「利益」を出すことです。その責務が果たせない場合には、辞任に追い込まれる事も良くあります。Appleの歴代の社長など経営責任を取らされ、辞任しています。会社の役員の中には、社外からの役員も入っていて、社内だけの合意ではなく、社外の重役にも同意を求める必要性が出てきます。また、株主の発言権は強く、特に収益改善の即効性などを強く要求します。すると、社長としては、まずは採算性の悪い事業部門を閉鎖し、その部門の従業員をレイオフします。
これは、働いている人が、ある職種で雇われているので、その職種がなくなれば、失業すると言う事を意味します。米国では同じ人が、まったく異なる職種をやると言う事はあまり普通ではありません。ですから、自分の勤めている会社の採算性を見ていると、自分の仕事が無くなると言うのも、事前に予想がつくそうです。
先に転職する人もいる
そのように予想した場合、人によっては辞めさせられる前に自分から出て行く人も少なからずいます。これらの人は、別の会社に応募して、受け入れられて転職となります。人によっては2-3年で会社を変わるような人もいますし、会社の採算性に関係なく自分に合わないと思ったら、さっさと辞める人もいます。もちろん、相手から受け入れられるべく、自分を鍛えていないと思うようには進みませんが。ですから、会社が不景気になると、優秀な順に従業員が辞めて行くと言われるのも、この辺りの事情が絡んでいるのだと思います。
従業員の日々の研鑚
米国は、社会に出た後でも大学や、地域がキャリアを伸ばすさまざまな機会を提供します。もちろんMBAなどもそうですが、地域の大学は夕方から、社会人向けのカリキュラムを用意しています。土日の授業をするところもあります。地元の人は、安い授業料(1学期で$50-200位が普通です)で、法律や会計学、コンピューター技術などさまざまな科目を受講する事が出来ます。会社によっては、それらの学習に対して授業料の補助や勤務時間の融通をするところもあります。大体夕方5時くらいから始まり、終わるのは9時とか遅いものでは11時などというのもあります。カリキュラムをとる従業員は、会社が終わるとそそくさと学校へ出かけて行きます。
私の見るところ、30歳台くらいまでの人たちは、仕事に必要な科目は少しでも上のレベルをとるべく、勉強する人が多いように思います。通わなくても、通信教育で学位を取る人も出てきていますし、最近ではインターネットで学習している人も増えているという事です。
会社の中での実績作り
いくらレイオフがたやすいとは言え、従業員の立場からは生活が安定しないので、すぐに解雇されたのではたまりません。ですから従業員は、自分がどう評価されているか確認する事に一生懸命になります。たとえば、自分の仕事がうまく行って誉められると、そうだ俺がやったんだ!と強調しますし、自分の処遇については、納得できるまで確認を求めてきます。それに対して会社は、社員の貢献を、職務としてどれほど業績に寄与したかで評価します。結局は職務リストと合っているかどうかで判断する事になります。会社は社長のスピードでものを考え、社員はその評価を受け止めて、働く仕組みになっています。別の言い方をすると、会社と個人が緊張関係を持ちながら動いていると言う事になるわけです。
転職、レイオフのケース
会社のやり方と、自分の立場とが合わないときには、転職と言う事になります。今年に入って私の知り合いが何人か、家族と過ごす時間を大切にしたいと言う理由で転職しました。シリコンバレーは家賃が高いので、家の安いところに住むと通勤時間が非常にかかります。そのため、先ほどの勉強の時間や、家族と過ごす時間が取れないと言うのが、彼らの悩みになってくるわけです。その時は、家のそばに勤めを探す事になります。必ずしも待遇では恵まれなくても、家族と過ごす時間を取ると言う人も少なくないようです。
レイオフになった人は、どうするでしょうか。しばらくは職探しですが、会社を変わっても日本の場合と違って、退職金がはじめから数え直しとはならないのです。その理由は、退職金は個人が自分で積み立てる形を取っていて、会社を変わっても、そのまま次の会社で継続させる事が出来るのです。
このような点を考えて見ると、米国の雇用には「流動性」に対応した、個人を支えるバックグラウンドがある事が分かります。職場では雇用関係に緊張感を保ちつづけながら、経営者に引っ張られて行く個人の姿が、映し出されます。それに対応した形で個人を支援するシステムが社会基盤に組み込まれている事から、個人が思い思いに自分の人生を選択して行く姿がわかります。
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