最近、いくつかのベンチャー起業の内容を聞く機会がありました。企業になる前の開発の段階の話が中心でしたので、ベンチャー起業と書きました。何を考え、どのように彼らが新しいことに取り組んでいるのか、私なりに理解したことをお知らせします。そして、いずれの起業も「お金」には恵まれていませんでした。日本からの支援がありましたら、彼らに取り次ぎをしますので、支援をしたいと気になる方は私宛てにメールをお送りください。
どんなことを考えているか
一つは、Beという会社で、ここは新しいオペレーティングシステム(OS)を開発しています。しかもそのOSは、Pentiumマシンで走らせるものです。すなわち、PentiumにWindows 95以外のOSが載せられるというものです。これは以前Appleが自社でやると発表したこともありましたが、実際はベンチャーが開発して、ようやく今年の3月に製品化までこぎつけてきました。この中心人物(Gassee氏)は、まずフランスのHewlett Packardに勤めていて、その後米国に渡りAppleに勤務して、OSの開発を担当してきた人間です。そして、Appleを退社して自分で会社を作り、開発に集中してきました。見事、3月に製品化ということですから、すばらしいことです。彼は、日本語も上手で日本人の性格を良く知っています。日本人の特色として「和」という言葉をしきりに口に出していました。行動の基準として存在しているのは認めるけれど、それだけでは新製品の開発はできないとはっきり言っていました。言い換えると、既存のシステムの維持にはいい方法でも、新しいことを始めるには向いていないということでしょうか。それはそれとして、その新しいOSは、画像や動画の操作が簡単で早いというのが売りものです。確かに、IntelとMicrosoft以外にパソコンの選択の幅が無い現状にあって選択肢が増えるのはわれわれユーザーとしては大きな福音になります。
次のベンチャー起業は、世界中の言葉の翻訳コードテーブルの作成というものです。これは、任意の2つの異なる言語の、対応表をコンピューターのデータとして作るものです。やり方は、まず、ある二つの言語の対応テーブルを作り次にほかの言語の対応テーブルを作ると言うように、テーブル表をひとつずつ作ってゆきます。そうすると一つの言葉を軸にして、翻訳テーブルの輪が次々に広がるというものです。具体例で言いますと、日本語と英語の翻訳テーブルと、フランス語と英語の翻訳テーブルがあると、日本語とフランス語の翻訳テーブルは「自動的に」作成されるそうです。これを聞いていて思い出したのですが、「友達の友達は、みな友達だ。友達の輪」という言葉そのものが、現実のパソコンの世界にも構築されているということになります。英語を標準語としない私たち日本人にも、言葉の壁が無くなる道筋が見えてきたわけです。彼らのメンバーは数人しかいないそうですが、経営とマーケティングを担当する社長と、大学教授を辞めて開発に専念している人と、あと数名で開発の仕事をしているそうです。
お金はどうしているか
私は、このようなベンチャー起業では、どのように経済的な基盤を持っているのか大変興味を持って知りたいと思いました。前者のBe社の場合は、50人程度の従業員で仕事をしていまして、社長の金とよそからの支援が受けられる体制のように見えました。しかし、後者の場合は、まったく自分の持ち出しで仕事をしていて、それがすでに3年近くになっているそうです。大きな会社に話しを持っていっているのですがまだ、取り引きとしては成立していなくて、ベンチャーの基金も受けられていないそうです。開発担当者は、現在の仕事の未来を楽観的に考えていて、毎日毎日は楽しい、しかしそろそろ開発の仕上げになるので、社長としてはサポートしてくれるところが欲しいと訴えていました。翻訳ソフトの開発であればいくつかの会社は特定の言葉同士のものを開発しています。しかし、世界中の言葉をすべてつないでしまおうという、とんでもない事に挑戦している人たちは、そんなに多くないそうです。しかも、それが開発されて実際便利にはなるのですが、ひとたび出来てしまえば、そこまでという事もあって、あまりお金にはならないそうです。それでも、担当者は自信を持って、進むべき未来の方向であると確信しているところに、大きな「気迫」を感じました。
ベンチャー支援の実態
米国のベンチャーについての経済支援について、良く知っていると思われる方々の話をまとめるとベンチャーキャピタルの資金援助は、今や千の候補に対してに一つの支援が行われているのが実態だそうです。それも、ベンチャーキャピタルには今でも大量の資金が流入するので、一件当たりの資金供給額は、10億円以上でないと資金援助の対象にはならないそうです。後者のベンチャーなどは明らかに数億円の規模でしょうから、彼らはベンチャーキャピタルとは別の資金援助を求めなければなりません。それらには、エンジェルと呼ばれる、個人投資家にお願いするケースも多いようです。いずれにしろ、資金を入手するのは、事業それ自身と比べても難しい状況にあるようです。それでも毎日夢の実現に向けている人生を賭けている彼らは、堂々としてそして、明日を信じていきいきと活動しているように見えました。
更に興味をお持ちの方に、彼らの名前とホームページのURLをお知らせします。中味に興味のある方、資金援助を申し込まれる方、ぜひ、そのページを見て下さい。彼らは日本からの資金の援助を相当期待しているように見えました。
OSの開発をしている会社名 Be Incorporated CEOの名前 Jean-Louis Gassee
URL: http://www.be.com
翻訳テーブルを作っている会社名 Multi System International, Inc
CEOの名前 Richard A. Norick
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