【復刻】 006 多民族都市シリコンバレーの行動様式に学ぶ その１ 19971006

今週は、多民族都市であるシリコンバレーに来ている各民族が、どのようにその民族の生活パターンを反映しながら、生活し、仕事をしているかを見てみたいと思います。もちろん、私が経験したことを中心に考えていますので、奥行きは不足しているのは承知の上です。まずは、家族とビジネスいう観点で各民族を対比しながら述べてみたいと思います。

大家族主義が多い、アジア系
アジア系の人々は、家族中心で動くことが多いように思います。中国（台湾も含む）しかり、韓国しかり、ベトナムしかりです。特に中国、韓国系の人は、長老格のおじいさんに従った大家族連れがぞろぞろと行動しているのを見掛けることが良くあります。たとえば、中華レストランで、その大家族が大きなテーブルを囲みながら、いろいろ話をしているのをよく見かけます。
この様な行動様式を取る理由は、昔から米国に住みついた人々が多いというのも一つの大きな理由ですが、民族の持つ特性でもあるようです。これは、実際のビジネスでもそのような「大家族的」行動に表れます。具体的には、新しい仕事を起こした人は親戚縁者からどんどん人を集めてビジネスの集団を作り、それを次々に広げて行くという方法をります。ですから、すべてのビジネスが家族を基本に作られているとも言えるようです。ですから、はじめから気心の知れた仲間での仕事が出来ることになります。会社を作るのは早いですし、会社の意思決定も早いです。そしてその時、血縁がものを言いますので、長老は発言力をもてるわけです。ただしこの弱点は、家族主義が強すぎると、家族の中の人材の限界が、ビジネスの限界になる事です。その結果、ごく最近までは、中国や韓国は家族の集合体を超えるようなビジネスを作り上げる子ことが出来ず、そのため世界に通用する大きなブランドを育て上げることは出来なかったという事実もあります。

家族と会社は別という米国
米国人はどうでしょうか。こちらは「家族は家族」、「会社は会社」というのがとてもはっきりしています。私の周りを見ると、家庭を守ることを優先して、仕事はその次という人が多いように思います。
そして、家族を大切にすることが良き市民の必須条件であり、それを維持しながら生活している姿が、私の周りの米国市民の典型のように思います。

核家族と会社家族でまとまっている日本
では日本人はといえば、シリコンバレーにいる日本人は基本的には各家族単位で行動します。
ビジネスといえば会社を中心としたシステムになっていて、ほとんど血縁関係は出てきません。シリコンバレーには戦前日本から移民で来た人たちの、日本人社会もありますが、現在こちらにいるたくさんの駐在員の人たちとは、もちろん血縁はありませんし、日本人社会としてのつながりは希薄です。
会社をもう少し深く眺めてみると、面白いことが分かります。特に家族的要素という点を考えると、日本の会社はビジネスのしくみの中に家族的な機能を持ち込んでいるのではないかと思えるところです。たとえば、勤務時間後に仲間で集まって一杯やるということが、家族的な親睦の要素だけでなく、実際の仕事を機能的に進める上で役に立っていることもあるわけです。ですから日本の会社の行動は、疑似家族共同体としての行動ではないかと思えることもあります。（本当の家族は、お父さん抜きで夕食をとっているのですが） シリコンバレーでは、そのような趣旨でのアフターファイブをしているのは、日本人くらいです。どうも、家族の絆を、会社で擬似的に確認しているようなところがあるのではないかと最近気付くようになりました。

そのようなラフな比較ではありますが、家族という要素で次のようにまとめてみました。

------------------------- 家族の絆  仕事のしくみ
アジア系（日本人を除く）----- 強い   家族的
米国人------------------- 強い   機能的
日本人------------------- 弱い   機能的、しかも家族的

ですから、家族というのはここにあげられたどの民族も、相当重要視をしていますし、心情的に求めているものだと思います。その中で、日本人が、家族の機能を会社に実現している姿が出てきます。この前提に立つと、これからの世界の流れの中で、家族主義をどのように情報化社会の進展に取り込んで行くかが重要になると思います。それは、いまの日本が抱えた、日本システムの根幹のところでもあると思います。

今のところ、インド系のビジネスのやり方は日本に近いような気もしていますが、まだデータ不足です。中南米系については、あまりデータが取れていないので、ここでは述べませんでした。