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【復刻】 004 南部とシリコンバレー比較 その3 19970922

シリコンバレーの経済の背景
先週はシリコンバレーで働き、生活する人を人種という観点から見てみました。今週はシリコンバレーの経済的な背景を見てみたいと思います。

技術進歩の変遷
シリコンバレーが現在のように成長してきたのは、文字どおりシリコンを利用した半導体の利用技術が背景にあります。では、シリコンの技術といいますと、まずはじめには半導体を製造する技術が必要です。1950年代の後半に、ショックレー研究所の仲間が集まりFairchild Semiconductor社を設立し、集積回路を世の中にもたらしました。そして1968年には再びその仲間のうちからIntel社が設立されました。これがハードウェア側のバックグラウンドになります。それら半導体技術の進歩に伴い、1972年にはAtariがゲーム機を世界で始めて世の中に出し、1976年にはSteve Jobsがアップルコンピューターを世の中に出しました。そしてその一年後にはIBMもパソコンを出しました。このようなパソコンの本質は半導体集積回路でデータを処理するということです。はじめはゲームマシンとしてスタートした背景を持ちますが、データの処理をビジネスに応用することを目指してすぐにビジネスへの応用が始まったわけです。

情報というものの価値について
IBMがパーソナルコンピューターを市場に出した目的はゲーム機としての利用ではなく、あくまでビジネスへの利用をターゲットにしています。その努力の甲斐があって実際の仕事の中でどしどしパソコンが使われるようになってきたわけです。これらは、ハードウェアの観点からの話になりますが、それと同時に、利用できるソフトウェアの進歩も見逃せません。パソコンもその性能を引き出すにはソフトウェアが必要ですし、そのソフトウェアによって仕事の効率化が一挙に進むこともあるわけです。この例としては表計算ソフトの利用などはその一つです。
同時に同じデータを利用しながら、ネットワークで仕事を進めるという考え方が始まったのは、パソコンが世の中に現れてから5年も経たないうちの出来事です。私自身は、このネットワークという考え方にたどりついたことが、シリコンバレーの今日を築いたといえるのではないかと思っています。仕事の流れを解析し、どのようにデータとして取り扱うかを考え、次にそれをネットワークで共有し活用するということです。その中で、現実とのギャップが生じたら、そこでまた考えるという感じで、組織ややり方を早いスピードで変えることが出来るようになったのではないかと思います。
データがネットワークを動くということは、それはとりもなおさず、会社というものの組織や、物流などのコントロールを、見える形にしてしまうわけです。ひとたびそれがうまく行けば、それを次々に展開してゆくのは難しいことではありません。そうなると、どれだけの情報を、どのように流し利用するかが本質になります。ここに関して、シリコンバレーは半導体技術の開発が始まって以来、ここ50年間大いに貢献してきているわけです。しかも、現在では組織同士をネットワークでつないでしまうという考え方も導入されています。

南部と何が違うか
シリコンバレーの特色は、何といってもその技術開発力です。では南部との違いはというと、本社機能の使い方のような気がします。Charlotteという街は銀行の本社などが集まってきていましたし、テキサス州ののヒューストンやジョージア州のアトランタなど、たしかに南部や東部は銀行やマスコミなどの本社がたくさんあります。その意味では、シリコンバレーで開発されたものを、利用する立場にあるといえるかも知れません。そして開発されたものに利用価値があれば、それらに対する投資を担ってゆく事もあるわけです。
私は、シリコンバレーの現在は、ソフトウェアとハードウェアをデータのやりとりでビジネスへ応用したことと、それをネットワークへと広げたことにあると思っています。ですから、データこそがすべての基本という認識で、ひたすら突っ走ってきたところが、シリコンバレーになるわけです。

経済規模は
Business Weekに、シリコンバレーの特集(Aug.18-25 1997)がありまして、この中には面白い記事がたくさんあります。その中で現在の株式時価評価額での米国内の産業都市の比較が出ていますので、引用してみます。

Silicon Valley  $4520億(54兆円)  ハイテク産業の37%
Detroit   $1130億(14兆円)  自動車産業の64%
Hollywood  $560億(7兆円)  娯楽産業の55%
Wall Street  $4050億(49兆円)  金融サービスの26%

この数字をそのまま受け止めると、シリコンバレーは今や、米国の基幹産業になってしまったということがいえます。これはパソコンが関連するビジネスが生産額で米国産業全体の50%を超えた事実もありますので、間違いのないことです。しかしこの、時価評価の数字こそが、情報というものの米国の認識によって発生しています。なぜなら、時価評価というのは、株式時価によるものですし、その中には、ビジネスとしてはまだ利益が出ていないのに株式価格だけが高いとか、今までの尺度でははかれていない要因が含まれているのもかなりあるのも事実です。ですから、事業を起こして株を持つ億万長者は至る所にいるというのを耳にします。これからどうやって「情報」がビジネスに成長するのかは、そのビジネスが創出する価値がどれくらいになるのかと同じ意味を持ちます。今後、ネットワークが更に普及するのに伴い、他人事ではなく、目の離せない事柄になっています。

それから、以前お送りしていました、Charlotte Weeklyの50号まとめたホームページが、Denver在住の中村さんのおかげで、出来上がりました。中村さんのページは米国と日本をつなぐときに必要な事項がたくさん盛り込まれています。リンクも大歓迎ですので、一度見てください。
URLは次の通りです。     http://www.interpacificnet.com/hiro/

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