- 2010-05-22 (土)
米国のスマートグリッドについて、3回に分けてWeb投稿します。
先月SEMI主催のGPRCでお話した内容を改訂しています。
一回目は日本企業は、米国のSmart Grid市場には参入できないという話。
二回目はアジア発のスマートグリッでは破壊的イノベーションであるという話。
三回目は日本企業にとって、米国を拠点として、アジア市場に入るのは「Perfect Choice」である話。
現時点で米国のSmart Gridは立ち上がりに大チョンボしているので、いまこそスマートグリッド事業戦略を見直すべきという提言で構成されます。
今から10年先、をまず考えましょう。
その時、太陽電池や、風力エネルギーからの電力価格は現在の電力価格より安くなっています。
(これをGrid Parityと呼び、2015-20年の間に達成されると政府も、民間も合意しています)
その時の状況は、多くの人が「日常電力会社から電気を買わずに、自分の発電した電力を使用する」ということです。
そして同時に、発展途上国内(とりわけ中国、インド)の状況を考えると、送電線の届かない場所でも次々と太陽電池や風力による発電設備が建設されています。
すなわち、10年後には電力は自分で作り、消費する世界が現実になっているのです。
では、現在の米国に目を向けましょう。
エジソン以来の送電線網は老朽化が激しく、早期に手を入れないと、現行の供給量増大に対応できませんし、安定供給は保証できない状況にあります。
そこでObama政権は、米国経済再活性化法案(ARRA)にスマートグリッドの開発を折り込み、45億ドルの資金を投入してスマートグリッドを政策のひとつの目玉にしました。これにより、企業の参入を招き、開発を加速しようというものです。
それに応じた企業は、シリコンバレー企業を中心にGoogle、HP、Oracle、Cisco、Intel、IBM、Microsoft、GE、SAPなど
一方、ベンチャー企業もSilverspring、Echelon、Tendril、GridNetなど特化した技術を背景に、市場展開を狙っているベンチャー企業などがあります。
スマートグリッドの関連業種は勢ぞろいしています。
では、それを採用する電力会社の状況といえば、日本と違って電力製造会社と電力送電会社に大きく分かれます。
電力製造会社は、自社で発電プラント(火力、水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱、原子力、石炭など)を持ち、送電会社と契約をし電力を販売します。
送電会社は電力会社から電力を購入し、工場やビル、家庭に送電します。(米国では送電会社を電力会社と呼ぶことが多いです)
スマートグリッドの問題は、この送電会社の問題でもあります。
米国の送電会社は地域で細かく細分化され、一番大きなCaliforniaのPG&EでもCA州の1/2程度をカバーする程度です。
それぞれの電力会社には、それぞれに経営方針があり、規制や価格なども全て別々です。
送電会社は、立地している州の規制を受けます。この規制も州により別々で、送電会社の経営方針にも大きく影響を与えます。
これが、米国内の現状です。スマートグリッドという言葉で表わしても、内容は規制や経営方針がばらばらで、対応の仕方が多岐に渡るということがお分かりいただけると思います。
米国のスマートグリッドの複雑な背景に対して、米国内はすでにフルメンバーが動き出しています。
日本からの技術が簡単には適応できないことがお分かりいただけると思います。
しかし、最近米国電力会社の最大手であるPG&Eが設置していた、SmartMeter(遠隔読み取り電力計)に欠陥があることがわかり23000台が回収されました。消費者はそれだけでは納得せず、一部の地域では集団訴訟も起こされ、スマートグリッドは出足でつまずいています。これは、日本の企業には時間が稼げる良いチャンスです。有効に使いたいものです。
次回は、発展途上国のスマートグリッド技術が、実は破壊的イノベーションであることをご説明します。
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