- 2010-05-30 (日)
ここでのキーポイントは、太陽電池技術の進歩と価格の急速な下落が起こり、今後10年から30年にわたり発展途上国に太陽電池が普及し、それが「現在の巨大電力企業を崩壊へと導く」という流れである。地域と時間を大きな枠で視野に入れると見えてくる。
まず、2015年-2020年の間には先進国で「グリッドパリティ」と呼ばれる「自分で電力を作ったほうが、電力会社から買うより安い」時代が来てしまう。 (NEDOの試算では日本で、2020年で14円/kWh、2030年は7円/kWh、欧州も同じような価格を推定)
一方、発展途上国でも、今まで送電線のないところに「太陽電池や、風力発電の設置」が進む。設備費を入れても価格は電力会社が送電線を作り、配電するより安い状況になる。すなわち、今から10年以内に、「現在電力が普及していないところに、電力が広がる」状況になる。世界の人口では20億人以上がこの恩恵にあずかると言われている。
しかし、単独の電力供給は、トラブルや電力不足を招きやすいので、相互電力ネットワークは安定供給のためには必須のものになる。このシステムができると、安いコストで、ある程度の人口規模であれば電力が十分カバーできる仕組みが出来上がる。(しかし米国のスマートグリッドは、システムが巨大すぎて発展途上国には使えない)
もう一度、先進国に目を戻すと、今から20年先、現在稼動中の発電所が老朽化してくる。では建て直しをと考えると、1GWの原子力発電所の建設費は5000億円(50億ドル)と言われるが、発展途上国で使われている発電システムであれば1GWの発電設備コストは電力価格から逆算して、建て直しの1/10-1/100となる。
そのような時代に、誰が巨大な資金の必要な「巨大な発電所の建て直し」を望むのであろうか。発展途上国から浸透した、低コストで中規模電力をカバーする発電システムが望まれると考えるのではないだろうか。
歴史的に見ると、この流れは、巨大発電所を「メインフレームコンピュータ」、発展途上国の太陽電池発電を「PC(キット)」と考えると破壊的イノベーションと言う認識が分かりやすいかもしれない。PCが誕生した頃、メインフレームを作っていた会社は、PCを「おもちゃ」としてみていた。しかし、PCは進化し、価格が下がり、ネットワーク化して、メインフレームの性能を凌駕してしまった。今はおもちゃにしか見られていない太陽電池も、現在の巨大な発電所に対して同じような流れになると言うわけである。
しかし、ここで見落としていけないのは、ネットワーク化をしない限りメインフレームを乗り越えることはできない点である。
次回には、ネットワーク化(スマートグリッド化)で、日本を含めたアジアの企業のビジネスチャンスを提案する。
クリステンセン教授の著書
「イノベーションのジレンマ」
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