- 2008-05-25 (日)
飛躍する大学 スタンフォード (小学館創造選書 (94))
この本は、その背景を丁寧に拾い、まとめ上げている。(1985年出版)
大学が19世紀の後半に設立され、IT技術、電気から電子製品への転換、医療技術の開発、国防関連の研究、そしてシリコンチップの巨大な産業形成を経て、現在のように実学の分野ではほとんどあらゆる分野で世界のトップの私立大学となった。 州立大学の雄である UCBerkeleyとやはり州立の大学院大学のUC San Franciscoと合わせると、シリコンバレーは優秀な大学が密集した、世界でも希有な場所であることがわかる。
しかし、Stanford大学が経てきた道のりは決して簡単なものではなかった。
創設者のLeland Stanford夫妻は、大学に自分の持つ農場を切り売りしないことを条件に大学に寄付した。 それに合わせて手大学の経営が行われるわけである。 1949-1968の第五代学長Wallas Sterlingの時に、大発展を遂げる。
基本的な考え方は、Frederick Termanの考えに従い「優秀な研究者をまず採用し、その人脈をStanfordに持ち込む」であった。 優秀な人材の確保が次々と成果を生み出すのは70年代からである。
IT技術、インターネット技術、バイオテクノロジーで次々と先端研究の仕組みを作り上げ、その結果として、新しい産業を次々と興してゆくのである。 私が調べた限りでは、研究を基盤とした20世紀後半の新産業の95%以上はシリコンバレー発である(言い換えると、シリコンバレー以外で研究から産業へとつなぐことはほとんどできていないと言うことになる)
外から見ると、派手な動きも、実際のところは「緻密で」「考え抜かれた」シナリオから成り立っている。
そのときに、卒業生の支援が、金銭的にも、人材的にも大きいことがこの本を読むとよくわかる。 卒業生の寄付が、大学の研究を支えるのである。
この本の著者、川嶋さんは現在もStanfordにいらっしゃる。 日本のある大学教授が、講演の中で、一番感激した本の一つだとこの本を推奨していた。 まだ、この本が書かれて20年ほどしか経っていない。 本気で取り組めば、日本の大学も「大きく変化する」ことは可能だと思うが、「信念」「あるべき大学像」など、他人を巻き込みながら前に進む仕組みと人材をそろえたいものだ。
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