- 2008-01-18 (金)
日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)
山本七平の本。 もとは1975-76年の雑誌「野生時代」の連載だったらしい。 私が買って読んだのは2004年に新書版になってからなので、はじめから知っていたわけではない。 でも、読んで衝撃を受けた。 私はこの本を紹介して、日本人の欠点を「確認」するつもりはない。 むしろ、ここに書かれている現状を受け入れた上で、この発想から何が生まれるか、自分は何を行動するのかを考えて(自分も行動しているつもりだし)読んだ人には、考えて行動して欲しいのだ。 大本営発表というのは今でも行なわれているし、それゆえ、ここに書かれたような事柄はマスメディアが触れない部分でもある。 理解して、自覚した人が行動しないと、何も始まらない。
終戦時フィリピンで捕虜となった、小松真一氏は、収容所で今回の敗戦の原因を考察し、密かに入手した紙に書きとめ、そして日本に戻る時にはそれを骨壷に入れて持ち帰る。 奥さんには大切なものだからと言い残して亡くなる。 奥さんが銀行の金庫に大事にしまっておいたこの書物は出てきて、山本氏のところに届く。
そこから、この本は、小松氏の記録を中心に、太平洋戦争での日本軍の「現地での姿」を克明につづる。 そしてまとめ上げられたのが「敗因21ヵ条」である。 ここでは私の意見など入れても意味がないが、今の日本に符合する項目が多いのに驚く。
1は、戦後時間をかけて鍛え上げたTOYOTA生産方式そのものである。 この部分は日本人が得意なところである。 4.は大変な問題である。 人こそすべて、であるのに、数合わせが先行する。 4.になってしまったら、1.は全く不可能である。 この反省は他人事ではない。 それ以外も、とても納得できる。 小松氏の受けた戦前教育のレベルは、未だほとんど変わっていないのではないかと思わせる。 むしろ、本来「権利である教育」に「ゆとりの時間」などを「官が率先して、権利を奪うこと主導した」国である。 根本発想がおかしい。 教育は権利だから「受けたい人がいたら、いかに受けられるようにするかを考えるのが、官の役目」であろう。 ここが変わるだけでも、個人は大きく変化する。 小松氏は「世論」に左右される日本人の気質にも言及していて、自分で決めずに、世の中の流れに流される日本人(の主体性のなさ)を見抜いている。
私は、日本人は、もっと国際的にうまく立ち回れると信じている「能天気者」である。 それはさておいて、日本人が組織(戦争では軍)を背景にすると、人が変わってしまう。 会社(軍=お国)のためにと言いつつ、何でもやってしまうし、敗戦で捕虜になってしまえば、もと上官は我先に逃げ出すことも多かったと言う。 これなどは「大和魂」を信奉していた戦前の教育では、本来ならば「ありえない」ことであるが、現実には起こったことである。(終戦時に将校が、先逃げ出しした例は、中国でも多かったと聞く)
ここで考えたいのは、この21ヵ条は今のわれわれにも当てはまる。 それを逃げずに、見つめることが、日本人のアイデンティティーを取り戻すことである。 そして、アイデンティティーとは別の、客観的で合理的に対処できることは「合理的にやらなければおかしい」
シリコンバレーのビジネスの移り変わりを見ていると、合理的でないところは、結局取り残され淘汰される。 良く引き合いに出されるのはハードディスクが小型化していった時代に、大型を作っていた企業は、既存のマーケットしか見ていないので、従来の市場に固執する。 しかし、小型化した企業は、新しい市場をまず獲得し、その後従来の市場を速いスピードで手に入れる。 既存の市場がすべてと思った企業は、次々と淘汰されてゆく。
日本では「既存のものがなくなることに、不合理な理由で存続を図ろうと世論が動く」 これでは、代変わりや、先進的なものが出る機会が失われる。 それと同時に合理的かどうかを知るには、常に勉強しなければならない。 これが抜けているのであれば、考える人がいない社会しかできない。 国にとって大切なものは、人財でありそれは、たとえ戦争でも同じ。 むしろ平和な社会でこそ、人財は持てる力を思う存分発揮するのである。
教育、人づくり、どれもが気を緩められない。 21世紀は皆が良くなるために、人財が渇望される時代である。 解決するべき問題が「あまりに難しくなったから」 あえて繰り返す、私はこの本を紹介して、日本人の欠点を「確認」するつもりはない。 むしろ、ここに書かれている現状を受け入れた上で、この発想から何が生まれるか、自分は何を行動するのかを考えて欲しいと思うし、考えて行動して欲しいのだ。 理解するとは、必ず行動が伴うものである。
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Comments:1
- キビノ 2010-04-15 (木) 08:15
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山本七平氏の15年周期説が気になり、下記のブログで考察しました。少年→青年→中年→老年ときて今の15年は何でしょうか?
私は十二支の極である「子」の時代だと考えます。この字は終わりを表す「了」と始まりを表す「一」で出来ています。
HPには哲学史の新解釈と新しい社会システムを提示しています。http://blogs.yahoo.co.jp/k_kibino/61221145.html
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