- 2007-11-28 (水)
このことは、今のビジネススクールのやり方とは違う、事実の積み上げ方を採用しているわけである。
そして、産業競争力と企業競争力を分けていて、個別企業の活動を丁寧に拾っている。 その理由は、企業競争力を「オペレーション能力」と「経営能力」に分けるところにあるが、この本文中ではその仕分けは明確ではない。
しかし、日本の企業が経営について「形から入る」混乱を経ているのに対し、米国の企業が「事業推進のなかから本質に迫る」というところが私には、的を得た表現に見える。 その理由は「米国の経営は、指標が明確だから」である。 これは私の認識とも一致する。
内容は大きく6つに分かれている。
1. 分からないことは分けること
自分達が理解できなかったら、理解するようにしてゆくのも経営の大きな方針である。 GEのJ. ウエルチの企業文化改革こそ、かれの事業の革新であったと説く。 TOYOTAは難しいことほど、自分達でやるという。 そのためには、ITの時代でも、場の共有による情報の厚みを必要としていることとつながっている。
2. 自分の頭で、考えて、考えて、考え抜くこと
ヤマト運輸の小倉社長の創業時のコンセプトはそれである。 セブンイレブンの鈴木会長もそうである。 これではじめて会社の中に考える人たちが増える。
3. 客観的に眺め、不合理な点を見つけられること
これは、巷で言われる「見える化」に近い考えである。 皆が見えれば、そう大きな間違いはしなし(それでなければ、組織の意味はない) これも重要なことである。 そして、役員レベルでのタテ割りと横通しは、大きなファクターである。 それは、企業の活動の分担は上下ではないということ。 みんなが主体的に取り組んではじめて成立するものだという意識を社内に定着させることが、企業統治でも重要だから。
4. 危機をもって、企業のチャンスとする
危機を脱していい会社になった話は少なからずある。 人が真剣に取り組んで、真剣に考え、まっしぐらに進む力を示していると思う。 これがあってこそ、主体的な経営者が育つということとつながる。
5. 身の丈にあった成長を図り、事業リスクを直視すること
質実剛健がふさわしい表現かもしれない。 日本経営の根底に流れる思想である。
6. 世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること
ここで、企業統治という言葉が出てくるが、これは「お金」が企業を統括する最終的な理念にならないことからくるという。 サービスとか製品などの人に絡むところは、お金が逆のインセンティブになるという。 お金はガバナンスの対象として存在しても、人財の活性化とは別と考えるべき事柄というわけである。 これは、米国の企業でも、しっかりした企業ではよく見られる現象だと私は理解しているが、日本ではこの空白の15年間で、人財活性化に力を入れる企業が少なくなり、少しでも安いコストというところにこだわりすぎてきた状況が、自体を悪化させている。
個人の努力の部分と、協力的努力(アシスト)をどちらも評価するべきという論点は賛成である。 アシストに大きな意味があるのはスポーツではすでによく知られている。 このカルチャーが広まることは、社会の中での人間つながりを変える可能性がある。 大いに期待したい。
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