- 2007-10-26 (金)
能力構築競争-日本の自動車産業はなぜ強いのか 中公新書は、藤本教授が世界の自動車会社の生産性や経営を各種の尺度から、比較研究して、なぜ日本のTOYOTAをはじめとする自動車会社のものづくり能力が高いかを解析した本である。 そして21世紀も暫くはその競争優位は続くと断言した本である。 すでにご承知の方も沢山いらっしゃると思うので詳細は直接本を参照していただくこととして、2点画期的と思うことがある。
一つは、世の中すべての産業は広義の情報産業である、という観点である。 その載せる情報を 有形の媒体に転写するのが製造業、無形の媒体(メディア)に載せるのがサービス業になるという定義である。 言葉の定義で、物事を見る目が全く変わった、私にとっては衝撃的な体験であった。
もう一つは、擦り合わせ技術(インテグレーション)が日本のものづくりの背景にあり、その強さは、西洋の分析、純化、再組み立てでは暗黙知の部分が伝えられないので、日本の擦り合わせを持つ生産技術は簡単には真似ができないと説く。 しかし、それも、組織の持つ進化能力、学習能力に支えられる部分が大きく、そのメカニズムを内蔵している組織が、あらゆる状況を、進化に変えてしまうという。 備えあれば憂い無しである、あるいは、転んでもタダでは起きない思想である。 その現象には、創発的進化という言葉を与えていて、起こった現実に対処していると、当初想定していなかった良い結果が生まれることを指す。
以前のブログで紹介した、ものづくり経営学―製造業を超える生産思想 (光文社新書 293)は、能力構築競争に書かれた内容で、実際に現場に適用した例の集大成である。 学説(仮説)を実地に検証することほど楽しいことはないと思うが、その学説も、幅の広い応用が利くのが一番いい。 経営学の観点では、暗黙地、形式知のSECIモデルと同じように、国際的にも評価される。
シリコンバレーのビジネスは結果的にオープンで、モジュラー化されているのが多いが、コアのところについては、常に擦り合わせが行われていると思う。 例えば、Googleの創業者の二人や、Appleのマネジメントチーム、ベンチャーキャピタリストなど、近くにいないと仕事にならないという人たちは、その部分にこだわっていると思う。 出来上がった製品は、誰もが作れるとしても、そこに至るまでのプロセスは、やはり細かな微調整を必要とする。 人間のやることの基本はそんなところにあると、確信した本でもある。
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