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【本】 虚妄の成果主義 高橋伸夫

  • 2007-10-05 (金)
飛行機は電車より揺れないし、周囲も騒がしくないので集中して本が読めるところがいい。

虚妄の成果主義.jpg昨日は札幌日帰り往復。 結構な本が読める。U先生と昼食をとりながら、いろいろと日本の抱える問題点を話した。 たまたま、東大の高橋伸夫教授の虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメに話が及んだ。 この本は以前このブログに書いた、藤本隆宏教授の「ものづくり経営学」の中に高橋伸夫氏の章があり、それがとても面白かったので、行きの飛行機の中で読んできたところだった。 成果主義が日本で完全に失敗したのは、この絵にあるように昔からの日本的経営においての「職務遂行」と「職務満足」の一体運営を解体して、「職務遂行」とその「成果評価=金銭」に置き換えその金銭を「職務満足」につなげようとしたところであるという。

実際、私がいた財閥系の会社も2001年くらいに(私がやめたころであるが)成果主義を導入した。 その時の人事の説明(部長クラスへの説明であるが)「これから成果主義を導入する」「これを導入すると、社長の数字目標が、各事業部長に伝わり」「各事業部長の数字目標になる」「そして各事業部長からその数字が、各部長、課長へと伝わる」「各人はそれぞれ目標数値を与えられ、その成果を達成するインセンティブになる」 それゆえ「社長が利益を3000億円と言えば、それが確実に達成されるのである」と。

「そんなに簡単だったんだ、もっと早くやってくれれば、会社の業績も良くなったのに」と思ったことがあった。 その後、この運用はすぐに中止されたと言うことを聞いたが、自分の体験から、この成果主義は怪しいと言うことは感じていた。 もうひとつは、有名なIT会社のF社の社長が「成果主義」を導入するに際し「わが社の業績が悪いのは、社員がアホやから」とマスメディアに言ってしまったことで、さらにおかしいと思っていた。 

それはさておいて、いろいろと人間のモチベーションはレベルがあって、「金銭」と言うのはやる気を出すにはあまり効果がなさそうだと言う結論になる。 それは確かに、シリコンバレーの起業家達を見ていると、すでに十分な「金銭」を手に入れても、「自分のやりたいことをやる」と言う点で新しいことにチャレンジし続けているように見える。 これは、ビジネスという場において人間のモチベーションとしても常に考えていなければならないポイントであと高橋教授は指摘する。

ただ、この本の冒頭にある話はショックである。 日本の経営学の「権威」たちが今までやってきたことはほとんどが米国の学説や、手法の伝達であり、その成果についての総括、反省、など一度も行われていないと言う。 高橋教授の論文も、米国では評価されているが、日本では無視されているという。 私はそのことについて判断できるほどの知識は持ち合わせないが、シリコンバレーという言葉を使っている先生方の中に、シリコンバレーを誤解している人がいることを知っているし、日本の中の権威は新しいことに対して決してオープンでないことを感じている。 学問の世界でも「中味のない権威主義」「それに追従するマスコミ」の構図があるのはつらい。

そんな話をしているうちに、U先生からは「会社は頭から腐る」という産業再生機構の冨山和彦さんの本が面白いと教えられた。 お互いランチの後、紀伊国屋に行って、U先生はものづくり経営学―製造業を超える生産思想 を私は会社は頭から腐る―再生の修羅場で見た日本企業の課題を買った。 以前から冨山さんは(東大法学部、Stanford MBAなので)どこまでやれるか注目していたので、帰りの飛行機の中で読むことにした。

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