- 2007-08-12 (日)
シリコンバレーでは政府は援助はするが、主導はしない
シリコンバレーは、自立的な動きが多く、今でも東海岸の政府や、大企業からは「変わったところである」とか「カリフォルニアだから」という見方をされているようだ。 これは、シリコンバレーが米国で産業を立ち上げ、世界の経済に大きな影響を与えるようになって、まだ50年という歴史しかないことからきているかもしれない。 しかし、シリコンバレーをモデルにしようとして、米国内だけでなく世界中が挑戦しようとしているがなかなか成功しない。 これは、自発的にはじめるための環境がシリコンバレーほど蓄積されているところが無いためと(私は)見ている。 日本からも、地方自治体などがシリコンバレーに人を送り込むが、仕組みの解析ができても、あるいは自治体がお金をつけても、地元でのシリコンバレーモデルは決して動き出さない。
1980年代後半から、シリコンバレーの経済的低迷が起こった。 (ちょうど、日本の半導体が世界を席巻した80年代後半からである) シリコンバレーには、NPOとしてJoint Venture Silicon Valley Networkという活動がある。 このNPOは産官学のメンバーを結集して、1993-1998年までスマートバレー公社(Smart Valley Inc.)というやはりNPOを作って活動した。 資料はこの中の1,2にあるが、官は決して主導していない。 法規制をどしどし見直しをして地域の活性化につなげる仕事を分担した。 また、スマートバレーのネットワークの維持拡大に協力するとともに、住民へのPR活動を中心に動いている。 レポートが前半・後半に分かれていることを見ていただくとわかるように、作業途中でも、項目の進捗確認や、取り進めの見直しが入っており、成果を念頭に置いた実質的なことに集中している。
スマートバレー公社の活動とちょうど時を同じくして、インターネットやPC技術がブレイクした(1995年にはWindows95、Netscapeブラウザ、Intel Pentium Chipが登場)こともあり、新しい技術、新しい仕組みがシリコンバレーに生まれた。 1998年にはスマートバレー公社は役割を果たして解散した。 これ以降はご承知の通り、2000年のドットコムバブルまで過熱し、それ以降数年に及ぶシリコンバレーの低迷状態が続く。 日本の雑誌でも「シリコンバレーは死んだか」などというタイトルで、記事が特集されたこともある。 (今では本にもなっている) その低迷の間であっても、ベンチャーキャピタル投資は全米の1/3を常に確保し新しい挑戦は途絶えることは無かった。
当時のことを振り返ると、レイオフやアジアに戻る人たちが急増し、失業率も高水準であった。 失業率は8%近くまで上がっていた。 シリコンバレーの雰囲気は「景気に波があるのは当たり前」「この低迷もいつかは良くなるさ」「シリコンバレーはそれができる」「でも、それがなんだかわからない」「だから、できることをやってみよう」という感じであった。 すなわち、シリコンバレー的楽観主義(Wikiではなぜか楽天主義となっているが)なのである。 現実はすでに最適化されているから、それを信じようというわけである。 ビジネスをする人間にとって、その考え方はチャレンジを良しとすることと同義である。 2004年にはその中心的役割が、GoogleでありWeb2.0への動きであることが証明されたわけである。 このあたりは梅田望夫氏の「ウエブ進化論」に詳しい。
かくして、自立的なシリコンバレーの動きは、経済活動の持続的発展が組み込まれているように思う。 それを維持し発展させるために官は動かない。 むしろ官が離れた方がうまく行くのである。 この点を日本に当てはめて考えると、リスクをとる人たちを官が応援することが重要で、シリコンバレーを作るというようなことは官主導で行わない方がいいのである。 官に対する日本での信頼度を考えると、官のやるべきことは国民の意識の転換のお手伝いだと思う。 なぜチャレンジすることに価値があるのか、チャレンジして行く人たちが成長できる仕組みを真剣に考えること、すなわち今までのぶら下がりの人たちの考え方を切り替えさせるのが官の役割であると(私には)思える。 なぜなら、それらの人たちは今でも官が何かやってくれることが、経済の活性化になると信じているからである。 官主導の歴史を見れば、それが成功した例はシリコンバレーのベンチャーキャピタルの成功率より、はるかに低いことが見て取れる。
では、次回はシリコンバレーのベンチャーキャピタルが果たした役割について考えてみたい
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